【宣伝と広告のはなし。】ジブリの仲間たちの感想

スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんの著作「ジブリの仲間たち 」から、ヒットを生み出す広告宣伝の秘訣を紹介します。

まず本書の感想からいうと「非常に面白かった」です!

鈴木敏夫さんといえば、ジブリのプロデューサーとして有名ですが、日本一の映画プロデューサーといっても過言ではないでしょう。

そんな鈴木さんがジブリの宣伝、広告の秘密について余すことなく語っているのだから、つまらないはずがありません。また宣伝のことだけではなく、仕事とは何か、働くことの意味も考えさせられることでしょう。

もちろん実話、ジブリ映画制作の裏話などもあって読み物としての楽しさもあります。

(内容紹介)
 僕はこうやって映画を売って来た。
『風の谷のナウシカ』『となりのトトロ』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』
『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『猫の恩返し』『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』……
ジブリはなぜ常に予想を超える大ヒットを生みだし続けてきたのか? そこには
作品の力に加え、プロデューサーである著者と、仲間たちの力があった。「宣伝の
本質は仲間を増やすこと」という思想の下、監督と激論を交わし、企業を巻き込み、
駆けずりまわり、汗まみれになって体得した経験則とは――。初めて明かされる
秘話満載で綴る、30年間の格闘の記録。

ジブリの仲間たち (新潮新書)

それでは、大ヒットを生み出し続けたジブリの宣伝の秘密を要約して紹介していきます!

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映画プロデューサー鈴木敏夫さんとは

1948年、愛知県名古屋市にて生まれ。慶應義塾大学を卒業後、徳間書店に入社。週刊誌の記者を経て、アニメ雑誌『アニメージュ』の創刊に携わり、1981年には宮崎駿を初特集。それが縁となって「風の谷のナウシカ」の製作を支えた後、スタジオジブリの立ち上げに参画し移籍。以降、同スタジオ全作品の映画プロデューサーを務めている。

鈴木敏夫さんを初めて知ったのはたしか、もののけ姫の頃。確かテレビ番組で見たのだと思います。

でも実は、その時はあまり良い印象がありませんでした。。。人を食ったような物言いで、なんだか態度が大きい人だな、というのが最初の印象でした。しかも自分もまだ若かったこともあり、実際にアニメを創り出している宮崎監督ではなく、プロデューサーが表に出て話をしていること自体に若干の反発も覚えていました。

しかし、良い印象がないながらも、番組から目を離すことができなかったのを覚えています。なぜなら、話が圧倒的に面白い!それからというもの、その独特の語り口や人間味溢れる魅力にはまって、ずっとウォッチしてました。(ラジオTOKYO FMのジブリ汗まみれは今でもずっと聞いてます)

ちなみに名誉のために言っておくと、メディアに出ることは当初鈴木さん自身も躊躇したそうです。しかしながら、結果としてジブリの興行収入は上向きでしたから、鈴木さんがメディアに出たことは少なからず効果があったと思います。

今でこそ、映画「君の名は。」でプロデューサーの川村元気さんがスポットを浴びたり、メディアで語ったりと当たり前になっていますが、当時では珍しく鈴木さんが先駆者といってもよいのではないでしょうか。

本書は宣伝と広告に関する内容がメインとなっていますが、鈴木敏夫さんの弟子といってもいいジブリ出身の映画プロデューサー石井朋彦さんの本「自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド」では、もう少しマネジメント寄りの実践的な仕事術が紹介されていますので、興味のある方は一緒にご覧ください。

「ジブリの仲間たち」要約:鈴木敏夫さんの宣伝手法の秘密

「いい仕事、面白い仕事をして売れる方法」
本書の内容を一言で表すとこういうことです。

いい仕事、面白い仕事をして、なおかつ売れる!その秘訣を7つに絞って紹介します。

1)宣伝の本質は仲間を増やすこと

仲間を増やしていく過程での逸話は熱く面白いです。
とにかく、鈴木さんの人を巻き込む力はすごいです。しかもだいぶ戦略的に巻き込んでいる。巻き込まれた方はたまったもんではありませんが、それでも鈴木さんと一緒に仕事をするのが楽しいから、喜んで巻き込まれてしまうのでしょうね。

2)ヒットするには「制作」「配給・興行」「宣伝・広告」の3つの要素が必要

これは映画にかぎらずモノを売る場合でも同じですね。
制作は商品。配給・興行は流通。そして宣伝・広告です。
いいモノを作ってもそれがお客さんに届かなければ意味がないですし、メーカーでもサービス業でもクリエイターでも、売るための宣伝という行為は切り離すことはできません。またそこから逃げても、一流のクリエイターとはいえないでしょう。

3)数字で考える。いくらの宣伝費用をかけると、いくら売り上げが上がるのかを把握していること

意外に思いましたが、鈴木さんは数字に強い!
小さい頃から、プロ野球の選手ごとの打率を暗記していたという逸話も!
数字に強いというのは凄腕マーケターの基本ですよね。鈴木さんもご多分にもれず数字に強かった事実が明かされています。

4)基本的にクリエイター(宮崎駿と高畑勲)2人のやりたいことをやらせるために仕事をしている

好きな人、惚れた人と仕事をする、これを徹底しているんだなと思いました。
数字で考えるのとは逆に、ここでは完全に感情で動いています。
好きな人、一緒にいて面白い人と仕事をする。でなければ飽きちゃいますもんね。そこは理屈ではない。

理屈と感情、清濁併せ吞む人間的深みはぜひ見習いたいところです。

5)常識や業界の慣例にとらわれない発想と実行力

とにかく巻き込む力がすごい!そして前例がなくても実行する行動力がすごいです!
映画宣伝のパイオニアだけあって、鈴木さんは様々な手法を開発しました。
例えば、今でこそ当たり前の協賛メーカーとのタイアップ商品の発売。公開前にネタバレといえるくらいTVで露出する手法。インターネットがまだ今ほど一般的ではなかった頃に、製作過程をネットで公開するなど数々の宣伝手法を試しています。

6)プロデューサーの仕事は、人と会って話をすること

メディアなど表舞台にも出てくる鈴木さんですが、仕事のほとんどは人と会うことだそうです。
それこそ24時間、監督のそばにいて話をしたり。宣伝チームと合宿したり、突然呼び出したり、怒ったり、直談判している。
情熱と人間力のなせる業!大変刺激になります。

7)毎日2時間おきにミーティング、その人たちに片っ端から感想を聞いている

とにかく人に聞いて、そうやって時代の気分をつかんでいるそうです。
自分がいくつになっても老若男女問わず、話を聞く。特に若い人、女性の話を聞くことは大事ですよね。

「ジブリの仲間たち」の感想

「プロデューサーの仕事は探偵業と同じ。作家が何をしようとしてるのか探る
現代はどういう時代なのかを探る。それをもとに宣伝を考える。哲学を売るんだ」

鈴木さんは「今の時代は、大衆消費社会の終焉」といっています。これまでのやり方がこれからも通用するとは限りません。むしろ同じ方法をとっていたら失敗する確率の方が高いでしょう。

鈴木さんは言います。「この新しい時代には新しい時代のやり方がある」と。

またこれからの時代は、アジア。特にアセアンに出よ!とのことです。今や日本ではなく、アジアの方が人材も豊富で面白いクリエイティブを作っているそうです。

少し寂しい話ではありますが、均衡縮小の国内よりも、アジアの方が巨大な伸長市場があります。そしてコンテンツビジネスは需要が大きな場所でこそ成り立ち、盛り上がるものです。

これからクリエイターとして成功を目指すなら、最初からアジアや世界を意識していた方が良さそうですね。
ん~「アジア人」になろう!

本書「ジブリの仲間たち」に書いている内容は、コンテンツを売ることに関わる全てのビジネスマンやクリエイターが意識すべき仕事論が凝縮されています。実際に私自身かなり参考にしましたし、今でも実践していることが多くあります。

特に、面白い人といい仕事をすることを意識すると、人生も楽しくなりますよ!

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まとめ

鈴木さんはリスクテイカーだと思います。ヒットが約束された宮崎駿、高畑勲という才能があるにしてもだ。

鈴木さんの場合、リスクよりも、完全にやりたいこと、モチベーションが上回っているのだろうなと思います。そしてそうでなければ、宮崎・高畑という二人から信頼を得ることもできなかったはずです。

きっとその根底には、「映画がつくれればいい」という純粋な想いがあるのだと思います。そしてその純粋な想いを叶えるためにも、「ヒットさせ稼ぐ」ことが必要なのですよね。

モノを創り続けるにはお金を稼がなければなりません。これは避けることのできない事実です。目的はお金じゃない、なんて言い訳しても仕方ないんです。

クリエイティブへの情熱があるなら、いや人一倍の情熱があるからこそ、ヒットさせることに執着するという、ある意味での割り切りが大切なのだと感じました。

最後に繰り返しになりますが、この言葉で締めくくりたいと思います。

「好きな人、仲間と楽しく面白い仕事をしよう!」

以上、おるかでした。

(目次)————–amazon.comより

第1章 作ることにしか興味がなかった僕が宣伝を始めるまで
『風の谷のナウシカ』(1984)
『天空の城ラピュタ』(1986)
『となりのトトロ』(1988)
『火垂るの墓』(1988)
『魔女の宅急便』(1989)

〝徳さん〟との出会いと、高畑さんの教え/気がつけばメディアミックスを始めていた/
「ラピュタジュース」で考えたタイアップの問題点/配給会社が変われば、宣伝も変わる/
ヤマト運輸とのタイアップから始まった『魔女の宅急便』/日本テレビの出資と宣伝大作戦/
コピーをめぐる徳さんとの対立 ほか

第2章 映画宣伝を変えたタイアップ時代の到来
『おもひでぽろぽろ』(1991)
『紅の豚』(1992)
『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994)
『耳をすませば』(1995)

新生ジブリのスタート/まず映画の成功ありき――タイアップの基本方針/
映画宣伝6つの手段/後々まで関係者の語り草になったヒット/
JALとのタイアップから始まった『紅の豚』/「カッコイイとは、こういうことさ。」/
JAの力を知った『平成狸合戦ぽんぽこ』/『耳をすませば』が大ヒットと言われた理由 ほか

第3章 空前のヒット作はこうして生まれた
『もののけ姫』(1997)

関係者から反対された企画/熱海合宿と、「宣伝費=配給収入」の法則/
難産だった「生きろ。」というコピー/6時間40分のメイキング映像と4分15秒のプロモーションビデオ/
『もののけ姫』を〝映画界の野茂〟にする/宣伝総力戦、自ら矢面に立つ/
映画がフィロソフィーを語る時代 ほか

【東宝宣伝プロデューサーの視点1 矢部勝】

第4章 時代との格闘
『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999)
『千と千尋の神隠し』(2001)

映画とプロパガンダ/観客が減ることも覚悟してやったパロディ/
徳間グループの総会で述べた「敗戦の弁」/あえて部数を落とした「アニメージュ」の経験/
もう一度ヒットさせたら宮さんがおかしくなってしまう/2倍の宣伝×2倍の劇場/
コンビニの店頭がメディアになった時代/映画のテーマは「貧乏」から「心」の問題へ ほか

【東宝宣伝プロデューサーの視点2 市川南】

第5章 汗まみれ宣伝論
『猫の恩返し』(2002)
『ハウルの動く城』(2004)
『ゲド戦記』(2006)
『崖の上のポニョ』(2008)

宣伝とは仲間を増やすこと/「一生に一度くらい額に汗して働け」/
想定外の事態に苦戦した『イノセンス』/宣伝しない宣伝/
タイアップの決め手は三ツ矢サイダーの味?/1万GRPをめざせ/
シネコン時代の劇場宣伝/予告編の復権とリピーターの時代/
デジタル×アナログのバランス/川上量生さんを〝プロデューサー見習い〟に ほか

【東宝宣伝プロデューサーの視点3 伊勢伸平】

第6章 ヒットの功罪
『風立ちぬ』(2013)
『かぐや姫の物語』(2013)
『思い出のマーニー』(2014)

宮崎駿×高畑勲、25年ぶりの同時公開?/ユーミンへの公開オファー/
時代に追いつかれて/宣伝手法の総決算/
目的のためには手段を選ぶ/「姫の犯した罪と罰。」をめぐる葛藤/
『かぐや姫』10の宣伝ポイント/〝作られたヒット〟を望まない監督/
ヒットの小ぶり化と、大衆消費社会の終焉/新しい時代の風 ほか

Amazonで「ジブリの仲間たち」を見る。

【手柄もプライドも捨てる】自分を捨てる仕事術-鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド

2017.09.22
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